機動戦士ガンダムSEED DESTINY第47話「ミーア」感想。

えっと、ミーアの日記。キャピキャピした口調がどうも苦手なのですが、感情移入は割としやすいです。健気で可愛い部分もあります。演出と行動のギャップは他キャラよりは少ない方でしょうか。ただし後半で「議長は正しいんだから」と連呼していたのは「議長への妄信が間違いを産んだ、議長は悪だ。」ということを無理やり印象付けるようなやり方で、非常に違和感がありました。むろん、こういった周囲についての描写で、特定の対象を善だの悪だの印象付ける手法が必ずしも良くないと言う訳ではないのですが(この場合の善悪は物語上のヒーローと反ヒーローと言ったような意味)、そういった場合にも悪だと判断される過程はきちんと描写される必要があります。ミーアが議長を妄信していたことは議長が悪だということにつながるわけではなく、ただ単に視聴者が共有しているであろうと製作側が想定する「妄信は良くない」という意識に訴えかけることによりある種のミスリードを誘っているだけで、中身を伴っていない描写であることが問題であると思います。
キラが「議長に攻撃されなかったら疑っていなかった」という旨を言っていましたが、議長が「悪い人」でなかったとしてもラクスが討たれる理由は十分にあります(フリーダムなどの戦力の強奪など)。これはキラ達の現状認識がアレと言うよりも、ラクスが討たれる正当な理由を製作側で適当につぶしておかなかったことが問題です。その結果視聴者にキラ達が「逆切れ」しているだけだと言う印象を与えてしまいます(というより実際そうです。作品世界中での位置づけが製作側が意図していないものになっている感じ。)。さらに、こういったことを製作側がわざとやっているんじゃないかと思える節があって腑に落ちません。アスランに「お前たちが戦場を混乱させている」と言わせたようにキラ達の行動がなんらプラスになっていないことをわかっているにもかかわらずキラ達を「正義の味方」として演出したりと、描写と演出の間に矛盾点が多すぎます。
議長の演説もイマイチ。具体的内容が未だ言われていないのでなんともいえませんが、言っていることが現代においてさえ前時代的なユートピア社会主義をさらに劣化させたものであるというのは創造性が全く無いと思います。そもそも「争いの無い世界」というのは不可能で、外交交渉などによって開戦のリスクを抑えつつ自国の国益を守り抜くってのが軍政に対する一般人の認識じゃないかなぁ。製作側が「争いの無い世界」を目指すことが可能だと言う認識でいらっしゃるのも、何と言うか、安易だなぁ、と。一縷の希望、夢想として「争いの無い世界」は誰しも持っていると言えるかもしれませんが、政治家が現実的に目指す目標としてはありえないと思います。物語上の落としどころはナチュラルとコーディネイターの対立の解消とするのが関の山であって争いの無い世界ではないし、ましてやアークエンジェル側の未来に対するビジョンは全く提示されてこない。ここにきて総集編に近いものを入れる構成意識も理解できませんし、一体どうまとめていくつもりなのでしょうか。
アークエンジェルの乗員に、ザフトなど他勢力の制服をわざわざ着ている人間が多いのも非常に気持ち悪いです。とにかく、全ての描写が雑に見えてしまいます。