銀河漂流バイファム総括

せっかくここまで感想を書いてきたので、画竜点睛として総括を。
なんといってもキャラクター描写がいいです。基本となるのは戦争に巻き込まれて親を探す13人の子供たちの視点なんですが、キャラクターそれぞれが個性的なのはもちろんのこと、キャラクター間の間合いが非常にうまいんですよね。多人数で会話している時、きちんとそれが実感できる作品は稀有だと思います。キャラの個性がきちんとそれぞれの魅力に転化できているのも素敵。あとシナリオの間合いも素敵です。展開が速すぎず遅すぎずで退屈な部分もなく、それでいて説明不足になるような場合もなかった。意外性こそ少ないものの、破綻もなく、十分に楽しめる高いレベルに達していました。後半の異星人と地球人のハーフたるミューラァさん周りについては私はかなり気に入りました。本来の「バイファム」ではないけれど、ロボットアニメ然としたハードな業を背負ったこの人が登場することで、子供たちのドラマでありながらそれにとどまらない、もう一つの主題が提示されたという感じ。劇中ではミューラァさん視点ではないけれども、我々はミューラァさんの視点からも楽しめる。二度おいしいって感じでしょうか。子供たちのドラマを崩さないギリギリのラインでやってくれたのがポイントですね。んで、要所要所の演出が良いです。ラストシーンは言わずもがな。ケイトさんやミューラァの死ぬシーンの演出も泣けます。
次にメカニック周り。この作品でのメカって言うのはキャラクターの関わりの中、人対メカのケースで活きているものだなぁと思いました。高下駄のときなんかはむろんそうですし、地上で襲ってくるARVと子供たちの描写、トゥランファムの複座特有の掛け合いなんかもそうです。他方、メカ対メカのケースはほとんど印象に残っていません。せいぜい慣性制御用の肩のバーニアくらいで、戦闘時にはただ撃ち合うだけって印象しかないんですよね。武装がレーザーガンのみで白兵戦がやりにくい(私はロボットアクションの肝は白兵戦だと思っているクチです。もちろんバランスが大事ですが。)のも大きいと思うんですが、やはりこの作品ではロボットアクションはメインじゃないんですよね。敢えて悪く言えばメカはキャラクターの引き立て役に過ぎない。ただ、どうせメカアクションを入れなければならないのならもう少し目を楽しませてくれたって良かったんじゃないかなぁ、とは思います。あと宇宙でのRVとARVの印象の違いが、連邦軍のMSとジオン軍のMS程度の違いでしかなかったのは不満です。異星人はやはりパーソナリティもだいぶ違うでしょうし、それをデザイン上の差異でやるってのは結構基本だと思っていますから・・・。ただ、地上用のARVは変なメカが多くてよかったです。なんで宇宙用のARVはあんなに普通なんでしょ。
あとスコット。スコットについて特筆させてください。私のスコットのイメージは慎重(悪く言えば臆病)だけど頼りになる時は頼りになるって感じなのですが、後半の彼は軽躁過ぎて違和感があります。むろん、彼がネタキャラとして描かれたこと自体は良いんですが、いざという時の彼はもっと腰が据わっている、そうあるべきなんじゃないかと。前半は締めるべきところは締めていたという印象があります。
まぁ、そんなこんなで銀河漂流バイファム。万人にお勧めできる出来だと思います。返す返すキャラ周りが良いです。特にお気に入りなのはスコットとフレッドとミューラァとケイトさん。その中でもスコットですねー。