コンテンツメーカーの正気を疑う。

DeepParanoia様より
ストライクウィッチーズ」3話で一部地域だけ規制が掛かるとの事です
http://paranoia.sblo.jp/article/17052836.html

まず、局ごとに規制の基準が違うのは問題だと言うのは確かです。地域格差の一因にもなっているし、業界全体で統一的な基準を策定すべき。

ただ、ここで自分が気になったのはこちらの記事で引用されているアニメーターさんのブログです。
「正常な大人の人にはダメだったらしく」ということを、おそらく皮肉で仰っていますが、こういうのを皮肉で言ってしまうあたり意識が低いよなぁ、と思わざるを得ません。何が言いたいかと言いますと、「無差別に垂れ流す地上波で放送しているにもかかわらず、"正常な大人"に受け入れられなかったことを真摯に問題として受け止められないんならダメだよなぁ」というコト。ピンポイントで視聴層を絞っているOVAでこのように規制されたならば確かに不当な介入なので、受け流しても構わないと思いますが。以下、この文脈に合わせてお色気アニメを地上波で流すことについての詳論。

いわゆるお色気重視のアニメ、性的な描写を前面に押し出したような多媒体原作を含むアニメですね。こういったものは90年代まではOVAでの製作が一般的でした。これは地上波放映が適さないということなんですが、90年代以降いわゆる深夜アニメという形で地上波に流れてきたんですね。これは独立局の局側の規制が弱かったというのと、地上波放映による広告効果に着目して、OVAの宣伝という形態になるということです。

以上簡単に踏まえたうえで、僕が言いたいのは二点。
まず、やはり地上波で垂れ流しにする以上、不特定多数の人の目に触れるということで、ある程度自重することは必要だろうな、ということ。誤解して欲しくないのは、僕は青少年保護を名目とした法的規制には(どちらかといえば、ですけど)反対だし、青少年を有害情報(笑)から切り離そうとしても無駄だと思っているということ(アダルトビデオの年齢規制すら、それ自体は無駄だと思っています。どれだけの男子中学生が観てることか(笑))。もちろん、正しい性教育が担保されている、という前提ではありますが。
それと、いわゆるお色気アニメの需要自体は認めるし、それの制作自体には一向に文句がないということです。
僕が言いたいのはそういうのを見たくないという人への配慮ですね。漫画やOVAであれば、見る側は能動的に見る人だけなので全く構わないんですが、地上波というのは偶然目にする人の方が圧倒的に多いので(そもそもこのモデルの地上波放映が目的とするのは、偶然目に入る人への広告です。もし能動的に見る人の方が多いのであれば、それこそ地上波でやる意味がないといえます。)、そういう風に垂れ流してどう思われるか…という話です。

一言でいえば「確かに貴方がたの作ってるものが有害とは言いませんが、それでも不特定多数に胸を張って見せられるのか?」というコトですね。
アニメファンの人たちが、いわゆる青少年保護を名目にした一律的な規制に反対するのはわかりますし、それは僕も同じです。ただ、理不尽に規制されないためにもこちらも節度を守る必要はあるんじゃないかというコト。一アニメファンとして観ていて、確かに理不尽な理由で規制されるというのは嫌です。ただ、アニメファンの方も「表現の自由だから何をやってもいい」という感じがしてやはり嫌だなぁ…と思います。地上波で流す以上、公共物なので単に表現の自由では済まないわけで。
逆にOVAでやる場合は"ほぼ"何をやってもいいと思います。

で、言いたいことのもう一点なんですが、仮に彼らが胸を張って見せられると言ったとしてもそれでは済まないというお話。前述した実質的OVAを地上波で流す方式なんですが、これが近年顕著になっている地方格差の一因になっているわけですね。まず独立局は総じて規制基準が緩い(これは一律のガイドラインを作るべきだと思います。系列や局ごとにバラバラなので)のと、独立局は放映権料が安い(制作側が枠を買い取る方式なので)、あとはテレビ局の放映エリアの区分けが無茶苦茶で、あからさまに大都市圏の視聴者に有利な区分けになっている。ゆえに大都市圏のみで放映する方が圧倒的に効率がいいということになるんですね。枠買い取りゆえに全国放送に成り得ませんので。

逆にいえばOVA(とあえて表記しますが)の宣伝に当たってはこれだけで十分なわけです。地上波で放映したという事実の存在(笑)がスポンサー的には大切らしいので。個人的には地上波であらかじめ流すことに宣伝効果があるとは考えられないし(地上波でほぼ同じ物を流すのに、普通買いますか?という話ですねw)、むしろスポンサーへの売り込みの際に放映するという事実が大切だと聞きます。それに、例えビジネスだからといって、ローカルに限定されるような性格のものではないメディアに地域的な格差があって道義的に許されますか?と言うことは言いたいです。これはアニメに限らず言えることですが、前述したように地上波(と言うか無料放送)は公共物だと考えています。確かに私企業なんですが、「公的性質」は有しているよなぁ、と。地理的な難視聴地域はともかく(これもかなり問題ではあるんですが)、県単位でかなりの格差がある現行の地上波放送はかなり前時代的。

まぁ、これの根源的な原因は放映地域のめちゃくちゃな区割りにあるので、放送行政が一番悪いんですが、だからと言ってコンテンツを作っている方も格差の原因たる道義的責任は逃れ得ないわけで。現代はネット配信と言う代替手段があるのでなおさらです。地上波放送では物理的限界があって格差は逃れ得ないので、放送全てがネット配信に移行するのが理想ですね。地上波なんて滅びればいい。(確かにネットインフラの整備と言う問題はありますが、それでも全国民に対してに地上波放映を提供する環境を整えるより、全国民に対してネットインフラを整える方が圧倒的に楽です。もしくは完全にBS移行でもいいんですが。)

現実的対処としては地上波放映に先行してネット無料配信するようにすれば、コンテンツメーカーとしては誠実だと思います。

加えて言えばコンテンツメーカーとスポンサーが一致する環境というのは、やはり不健全ではあると思います。いい物を作るために必要な緊張関係が生まれづらくなっているような・・・。そういう意味でも地上波放映と、それによって売る商品(=DVD)が一致するやり方というのはやはり歪です。