コードギアス 反逆のルルーシュ第14話「ギアス 対 ギアス」感想。

さてさて、『コードギアス 反逆のルルーシュ』。毎週楽しみに視聴しているのですが、普段は時間の都合上感想は書いていません。しかしながら今回、非情に面白い(私好みな)内容でしたので、「コレは何としても感想を書かねば」と思い。今回の更新へと至った訳です。アニメの感想を書くのはかなり久しぶりなので、うまく書ける自信はありませんが。
前半部ではルルーシュがゼロであることを目撃してしまったシャーリーと、誰かに自分の正体を目撃されて動揺し、犯人探しを行うルルーシュという二つのラインがありますが、この前半部において視聴者にはシャーリーがルルーシュの正体を目撃した後から、ルルーシュが撤退の指示を出させるまでの間が空白とされています。現場に残った血痕がどうして生じたのかわからず一時的に保留されているのはなかなか上手いやり方だと思います。
そして急転直下の後半部。ルルーシュがシャーリーの後を追ってナリタに向かうわけですが、列車の中でシャーリーに対する好意を素直に表そうとしないルルーシュがなかなかに良い。こういう男性キャラは好きだったりします。一方ナリタでは、謎の男(マオ)が登場し、シャーリーを精神的に追い込みますが、こちらの構成も巧みです。ここでシャーリーがブリタニアの軍人(ヴィレッタ)を撃ったことが明らかにされ、それとともに父親の死を自分がルルーシュと結ばれるために利用したのではないか、という二つの負い目、罪悪感を責められます。ここで現在のシャーリーのルルーシュに対する複雑な感情が露呈されますが、このような極限状態における生の感情の発露というのは良いですね。通常の精神状態でこのように感情が発露される(はじめから理性が無視されている)と不味いですが、理性を以ってしても押しとどめられないような状況、言い換えれば理性と個人的な感情の対立というのはかなり好きです。
ナリタに到着したルルーシュを挑発し、チェスで対局しながら連れ出すマオ。ここでは「はじめて」のチェスでルルーシュを圧倒し、相手の思考を読むというギアス能力を以ってそのマオの特殊性が描写されます。マオが物語上重要人物であるということがありありとわかり、この部分も重要なのですが、圧巻なのはこの次のシーン。
その思考を読む能力で巧みにシャーリーを誘導し、ルルーシュを殺させようとするマオですが、結局シャーリーの混乱した思考を読みきることが出来ず、失敗してしまう、というシーンです。愛憎入り混じった感情で好きな異性に銃を突きつけるというのは、それだけで美しい(と私は思います)です。加えてルルーシュとともに自分も罪人であると信じ、ともに死のうとするというのはまさに愛の極み。美しいです。私見ですが、愛というのはそもそも命を賭して行われなければならず、同時にありとあらゆる手段によって目的が実現されようとする最大の罪悪だ、と思います。そういう意味でシャーリーが「自分の父の死を利用してルルーシュと結ばれたのではないか」という認識を持ったことはある意味で非常に妥当でありますし、美しいことであるわけです。ここにおいてはマオのギアス能力や、ルルーシュの理性に基づいた洞察はもはや意味を成さず、ただシャーリーにおける感情のせめぎ合いがあるのみです。ここでは、シャーリーのルルーシュに対する愛情が勝り、結果的にルルーシュを守ることになりましたが、しかる後にシャーリーが最も罪悪に感じたことが「ルルーシュを撃ったこと」だというのは恋愛感情の自己中心性であり、ルルーシュに対する真実の愛がある、と言えましょう。
そしてシャーリーの記憶(≒苦しみ)を取り去るルルーシュ。ここで取り去られたのはルルーシュに関する記憶だけ、という認識でいいのかな?ここでルルーシュは自分に笑顔を向けてくれるシャーリーを失い、失ってからその本当の大切さに気づいた、と述懐します。これも非常に哀しくて心を打つ訳ですが、その際に記憶を失ったシャーリーが無自覚的に、何らかの(こう記述するしかないのが難しいところですが)可能性を示唆するのがさらに悲劇性を高めています。
恋愛感情の自己中心性という罪悪には反吐が出ますが、同時にそれは非常に美しいものであって、今回の話ではその二面性が表現されるとともに、とりわけ美しさの方が強調されていたのではないでしょうか。アニメを見ていて美を感じたのは久しぶりでした。今回の話がこれからのルルーシュの戦いにおいてどういった影響を及ぼすかによって本作の真価が決まってくると思いますし、期待は非常に大きいです。