ガンダムSEED DESTINY感想

えーっと、たまには現行放映中の作品の感想でも。ゴメンナサイ、ネタバレ対策はしませんので、ネタバレされたくない方は読み飛ばしてくださるようお願いいたします。たいしたネタバレは書かないと思いますが・・・。


えーと、シンに関する場面ではきちんとドラマが作れている感じ。それにしてもシンの今の境遇ってホントに悲惨ですねぇ。アスラン・ザラひどすぎるだろって思います。何がひどいかってシン、というかミネルバ視点ではアスラン・ザラミネルバを引っ掻き回して逃走したってことがキチンと描写できてる、つまり製作者サイドでもアスラン・ザラの行為がアレだって理解できているのに、全体の流れとしてはアスラン・ザラ脱走が当然であったかのごとく描写されている。こはいかに。スタッフさん方も内部分裂起こしてるんですか?描写をどちらかに特化させてくれないとザフト側もアスランもキャラとして死んでしまうと思うんでしっかりしていただきたいところです。中途半端な描写のせいで、アークエンジェル寄りである全体の演出ではシンは悪者にされて(やってることの筋は通っているにもかかわらず)、アスランも印象が全く一定しない。支離滅裂なんですよね。にしてもシンの決意は本当に悲壮。シン視点で見ようとするとホントに泣けます。
んで、オーブ攻略なんですけど、オーブにはまともな描写をされてる人物はいないんでしょうか?まずセイランなんですが、本来、理想ばかり追い求めて国を危険にさらそうとしたカガリ・ユラ・アスハを危惧して大西洋連邦と手を握ろうとした憂国の士という感じだったと思ったのですが、今回は国民に避難勧告すら出さず勝つためだけに戦争をやっているという感じでしょうか。そもそもあの段階でジブリールを受け入れるのもトンデモ描写ですし。悪役にしたいならしたいで、きちんと描写して頂きたいものです。あとはカガリ・ユラ・アスハ。戦場を先駆けるのは別に突っ込まない(ロボットアニメの文芸としてはまぁ、アリでしょう。)のですが、そもそも首長としての責任を放棄して無駄なテロをやってた(とアスランにもツッコまれていましたから、製作サイドにもそういう意識はあるのでしょう。)彼女が、戻ってきて指示を出すのが凛々しい様な描写で描かれていたのが違和感。あとセイランの息子の方を「国家反逆罪」とするのも当たらない気がするのですが、まぁ、コレはディティールですしスルーします。セイランの息子の方といえば野島健児氏のオカマっぽい変態演技、良いですねぇ。オカマキャラといえばボトムズに登場したアロンとグランを思い出しますが、その片方は氏のお父様である野島昭生氏。それを髣髴とさせる感じで素敵でした。
オーブそのものについてなんですが、これまでの描写でもなんだか無茶苦茶な国だという印象が拭えません。枝葉末節は減点対象にはしないようにしているんですが、積もり積もって重要な部分の印象まで崩してしまうと話は別です。今日の放送分でも首長だからといって娘に個人的にモビルスーツを遺すなんてトンでもねぇな、と思ってしまいます。
んで来週か再来週(来週は総集編なのですか?)、シン対カガリ・ユラ・アスハ。因縁の対決というわけで、ここは燃えどころですよね。燃えさせてくれなかったらこの作品見限りますよ。

結局、この作品がアレだって言われることが多いのは、各キャラの行動の是非についての描かれ方がきちんとしていないことが原因だと私には思われるのです。本作の視点はザフト視点とアークエンジェル視点に大別されますが、その二つにおいて是非がバラバラです。先ほど述べさせていただいたアスラン脱走もしかり、カガリ・ユラ・アスハの描写もしかりです。もちろん、対立する立場からそれぞれの正義を描くという手法はあります。しかし、そういった場合にはお互いがテーゼ・アンチテーゼとして機能することが特に重要で、本作ではその部分が最も失敗していると思います。ザフト視点からアークエンジェルを見た場合、「戦場を混乱させる存在」、「自軍に甚大な被害を与える大敵」としてそのテーゼたる「争いの根源たるロゴスを撃つ」というテーゼに反する存在としての意味を成しています。しかしアークエンジェル視点からの場合「議長が怪しいから撃つ」、「とりあえず戦闘はさせない」という感じでテーゼとしてもアンチテーゼとしても説得力が薄いのですよね。個々の事例を見てもアスラン「オーブへ戻れ」→キラ・ヤマトカガリは今泣いているんだ」って感じでテーゼに対するアンチテーゼ、アンチテーゼに対するテーゼになっていない。詭弁なんですよね。ほかの対立像をとってみてもそう。アークエンジェルに近しい人間は拠って立つテーゼがしっかりしていないように思われます。単一視点の物語として見たら、それこそ本当に支離滅裂ですし。しかも演出が均等ではなくどちらかといえばアークエンジェルメインになってるのも問題です。何がしたいのか良く分からない行動を長々と見せられると辛いです。
もう一つの問題点はキャラクターのかっこよさというものを勘違いした演出がなされているということでしょうか。これは第一話の時点で思ったのですが、カガリ・ユラ・アスハデュランダルに敬語を使っていない。凛々しい首長という演出を想定していたのでしょうが、失礼な人にしか見えない。寧ろアークエンジェル側にテーゼが欠落してることの原因もこれじゃないかなぁ。前大戦を終結させた英雄ということで超然的、理念的な雰囲気を演出しようとして、具体的なテーゼを失くしてしまった、みたいな。ザフト側は演出が普通なんですよね。うん、良く見えるけど本来これが普通。ただ、シン周りの演出、その悲壮感や決意、この前の復讐しようとした行為もシンというキャラが等身大で描かれていて(その行動原理が通常の思考で想像できる範囲内)、ここらへんは結構レベル高い、と思います。おかげでシン周りのカタルシスを求めて視聴を続けてるんですが。
追記、総評っぽいことを書いてしまったのでついでにメカ描写について。なんつーか、普通としか言いようがないですね。雑魚が棒立ちって批判がありますが、この程度ならほかにも結構あるからなぁ。もちろん雑魚が棒立ちで普通って受け止められるような現在のロボットアニメの平均レベルにはいささかの問題はあると思いますが。ま、インパルス対フリーダムとかは結構目を楽しませてくれたので、要所要所で善戦しているという印象はあります。メカデザインは結構好きです。フォースインパルスが好みなんですけど少数派っぽいですねぇ。インパルスといえば、色変わるの悪くないじゃんと思っておりましたが、ホビー関係のホームページを拝見していて「色違いだから装備変更だけでは揃わない」とあったのでなるほどなぁ、と思いました。確かにホビー関連は辛いわ。さすがバンダイさん。