プロレススーパースター列伝感想その1

巨人の星」などで知られる劇画作家、故・梶原一騎先生原作のプロレスファンタジー漫画(笑)。作画は原田久仁信先生。俺がプロレスを観始めたのは最近ですから(そもそもコレが書かれた時代には生まれておりませんが)、名前は聞いたことがあってもどんな方かはまったく知らないプロレスラーの半生が読めて面白いです。あとネタとしても。ちなみに講談社漫画文庫版。
ザ・ファンクス編:ドリー・ファンクJr.選手とテリー・ファンク選手兄弟のこと。予備知識としてはテリーがザ・テリーマン(キン肉マンより)のモデルになったことくらいしか存じておりませんでした。ザ・ファンクス編となっているものの、メインは父親のドリー・ファンクSr.選手の方かなぁ。ヒールとなって必死で銭を稼ぎながら、息子たちを超一流のレスラーに育てようとする・・・。プロレス版巨人の星みたいな感じかな。スピニング・トゥー・ホールドもかっこいい!
スタン・ハンセン編:ハンセン選手についても、ラリアートプロレスの元祖くらいの知識しかありませんでした。前章のファンクス編ではまだわりと無難に書いてる印象を受けましたが、ここいらからトンデモ・・・もとい伝説っぽい事象が見受けられるようになり、俄然面白くなります。ドラム缶を腕力だけで押しつぶしたりウェスタラリアートで相手がやばいくらい吹き飛んだり・・・(笑)。ただ、これらの伝説ももしかしたら本当じゃねぇのかと思わせる、いや、伝説と事実の境目が曖昧なこの絶妙なバランスはさすが梶原先生!シナリオについては、下積み時代のハンセンと今や大物になったファンクスの食事等の格差は印象的。こういう完全実力主義的なスポ根世界観は大好き。今の漫画じゃ見られないよね。ハンセンが苦心してラリアートを編み出すのも、ありがちなシナリオではあるけど良かったなぁ。バイアスかかってるかもわかりませんけど、最近の漫画みたいにあざとさがないような気がします。まぁ、あざとすぎてもお約束って感じでいいんだけど、中途半端にあざといのが多いからなぁ。
アブドーラ・ザ・ブッチャー編:ブッチャー選手も名前くらいしか聞いたことがありませんでした。ザ・シークや妻に裏切られたことにより、完全に合理主義者となったブッチャーはピカレスクでかっこいいですね。印象的だったのは頭部から流血したブッチャーが痛みをものともせずにニターと笑いながら振り返るシーン。そういった描写や不利な条件をものともせず地獄突きで相手を葬り去る強さ、極め付けには実質14対1の状況を切り抜けるという凄いエピソードを通して、ブッチャーの強大性が過剰なまでに表現されています。この章は特に当たりでした。
二巻末尾からスタートするアンドレ・ザ・ジャイアント編と四巻前半で終わるミル・マスカラス編は三巻が見つかりませんでしたので保留。
タイガー・ジェット・シン編:タイガー・ジェット・シン選手はこないだBS朝日で昔の試合をやっていたのを観て知りました。しかし特に印象には残ってないなぁ。で、シン編。これもあんま印象的ではありませんねぇ。インドのトンデモレスリング訓練は面白かったけど(笑)。どちらかっていうとピカレスクな魅力を描きたいんだろうけど、ブッチャー編を読んだあとでは見劣りしますねぇ。まぁ、ある程度は面白かったんですが、特筆すべきことはありません。
とりあえずの総評:今まで読んだのはここまで。全体を通して面白い点はところどころに挿入される「アントニオ猪木(談)」。物語の要所要所で猪木さんのコメントが挿入されるのですが、コレが結構笑えます。それとものすごい英語台詞。「シャーラップ(だまれ)!!」や「ゲラアウト(でていけ)!!」というものなのですが、カッコ内も原文ママ。括弧を挿入するくらいなら日本語で書けば良いと思いますが、ちゅーかそれ以前にゲラアウトですよゲラアウト。ものすごいセンスです。シナリオについては、ハンセン編でも書きましたが、事実と伝説のバランスが絶妙。普通に考えたらありえないことでも妙に説得力があるんですよね。なんでレスラーたちが凄く強く見える。この漫画の趣旨から見ると大成功と言えるのではないでしょうか。
そんなこんなで、近所のブックオフでは三巻だけ見当たりませんでしたので、福岡市内で講談社漫画文庫版プロレススーパースター列伝(3)を見つけられた方で、俺がそれを買っちゃってもかまわないという方がいらっしゃいましたら、情報を戴けたら幸いです。
追記:広島市内でも可です。